開発の軌跡 < はじめに < 1. 食物成分と免疫応答

はじめに
 私が食品栄養学を学んだ際、食物の評価は栄養素と味覚に関するもののみであり、現在広く知られるようになった第3次機能の部分については全く評価されていませんでした。食と免疫についてはアレルギーとの関係のみで、アレルゲンを食物から除去する研究のみが進められていました。現在は食べることによって免疫を高めるという考え方が一般的になってきておりますが、私が健康食品作りに携わり始めた1970年代には消費者にも医療関係者にもそのような発想はありませんでした。
 食物成分による免疫強化の考え方の広がりは私のBRM(生体機能調節作用)食品開発と啓蒙の軌跡と一致しています。30年に及ぶBRM食品開発の経験と、その経験をもとにした最新BRM食品原料オリザロース®の開発の経緯とその特性について記述します。

1.食物成分と免疫応答
 生体に異物が侵入すると、生物はそれを抗原として認識し、その抗原に特異的に反応する抗体を作って、異物による障害からの防御を行います。このことを免疫と言い、生体防御の重要な役割を演じています。しかし、この抗体との反応や急激なショック症状などの傷害作用が現れたり強められたりする場合があります。このような過激反応を起こすことを、アレルギーと呼んでいます。食品は生体にとっては異物ですから、当然抗原となります。従来、食物の免疫応答についてはアレルギー反応のみが論じられており、食物の成分からアレルゲンを除去する加工が主として行われて来ました。
 アレルギーとしての視点から考えると食物中にある抗原となる成分はマイナスの要因ですが、少し視点を変えて免疫系の刺激という考え方をすれば、特にW型アレルギーに関与するような成分は、その反応がゆるやかであれば免疫を強化することになります。このような観点から食物成分の免疫細胞への作用を観察すると興味深い反応が得られます。実際、牛乳蛋白質のカゼイン、リン脂質の一種であるリゾリン脂質はインターフェロンを誘導しますし、リンゴやキウイなどの果物や、ホウレンソウ、タマネギ、ニンジン等の野菜はTNF産生促進作用や好中球の集積作用をもっています。ですから、私達は日常摂取している食物のおかげで、感染症や悪性腫瘍にかからないでいられる、ということもできます。
 このような作用を応用した免疫強化食品が存在すれば、健康の維持、増進をはじめ疾病の予防や治療に広く応用することができます。
 免疫強化食品の原料となる成分は、最初から活性をもった形で食品中に存在している顕在的なものと、不活性な母体が消化過程で分解されていく途中で出現するパーティクル(破片)の特定のものが機能を持つもの、また、ある加工工程を経て機能を発現する潜在的形態のものなどが挙げられます。多くの加工食品は加熱や発酵、酵素処理等によって製造されています。それらの加工技術を用いることによって安定的に効果を発揮する免疫強化食品を開発することができるものと考えます。

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