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・光岡知足先生との食事会から生まれた共同研究
 (レジデントフローラの重要性と大腸粘膜の菌叢分析を語る)

@レジデントフローラの重要性のディスカッション
 ニューヨークで新谷先生にお逢いした次の年の冬、東京で光岡知足先生との食事会を持つことができました。新谷先生は率直に自分の考えを述べられ「食事と腸相において直接的な影響ばかりではなく、大腸の菌叢が間接的に影響しており、大腸粘膜に生息している菌の種類によって腸相が大きく変ると考えています」と語られました。それに対し光岡先生から「腸粘膜に棲息する菌による菌叢はレジデントフローラと呼ばれており生体へ大きな影響力を持っています。我々は糞便を分析し、安定的に棲息している菌叢をレジデントフローラとみなしているが、直接、生きた人の大腸粘膜の菌を分析したことがありません。サンプルの採取が可能なら、確認してみたいですね」と述べられました。その後、具体的な実験手法の打合わせになり内視鏡外科医と腸内細菌分類の権威者の共同による初めての大腸粘膜のレジデントフローラの分析が実現しました。

Aレジデントフローラの分析内容と結果
 被験者は新谷先生の患者で検査の際に粘膜を採取することに同意をしていただいた方、3名について、S時結腸、横行結腸、盲腸の入り口近くの3ヶ所をバイオプシ し、嫌気下で保存培地に保存し、光岡メソッドを用いて培養法で代表的な腸内細菌8種類を分析しました。分析は我々の研究室が担当しました。また同時に各被験者の糞便の分析を行いました。

 結果は明白でした。いずれの部位から摂取した粘膜からも糞便中に存在する8種類の細菌が検出され、その比率は糞便中の細菌と同じでした。ただし菌数は直腸から遠ざかるにつれて明らかに減少していました。この結果は3例とも大きなバラつきはなく、レジデントフローラは糞便を分析することで評価できるとの結論を得ました。腸内細菌の研究者の積年のテーマが内視鏡外科医との共同作業で大きなエネルギーを使うことなく解決しました。分析作業を行う側としては粘膜をサンプルとする方がはるかに楽であると同時に気になる腸相の部位をピンポイントで分析することも可能であることから、大腸の健康状態と腸内細菌との関係を明らかにしていくには臨床医との共同研究が大切であるとの結論を得ました。

 今回の分析結果と腸相との関係については例数が限られているため考察はできませんが、明らかに腸相の悪い方の菌叢はクロストリジウム、バクテロイデス、大腸菌等の悪玉菌が優勢でありました。今後、腸相と菌叢の関係がより明らかになれば腸内細菌の重要性が再認識され、疾病の効果的予防や治療に腸内細菌のトリートメントが加わることと思います。

・帯津良一先生との食事会を実現

 前々から新谷先生、帯津先生の両先生から一度お逢いし、ゆっくりディスカッションしたいとの御希望があり、多忙なお二人のスケジュールの調整に苦労しておりましたが2005年8月の終わりに食事会を実現することができました。

 胃腸の内視鏡検査と手術で多くの方々の癌を未然で防いでいる先生と、進行癌に悩む患者の治療にエネルギーを注いでいる先生、すなわち癌治療の川上と川下を担当されている両臨床医のディスカッションは大変興味深いものでした。死亡診断書を書いたことのない臨床医と毎日のように死に直面している癌患者と接している臨床医のディスカッションは大変感銘を受ける内容でした。互いの立場を尊重し合い苦労を語り、また生命の重みを説く姿は長年癌予防と治療の最前線で患者を看て来ている職人の風格がありました。病気の治療は理屈ではなく実践であることをつくづく感じさせられる会話の数々でした。「治療の結果の評価は患者の満足によって得られるものであり、自己満足ではない」というのが両先生の共通したポリシーです。

 新谷先生開発のポリペクトミーは、大腸内の腫瘍やポリープを開腹手術することなく除去することによって、患者の苦痛を軽減しQOLの低下を防ぐことが開発の思想でした。そして帯津先生のホリスティック医療による進行癌の治療は、先ず患者さんの生命力を高揚することから始まります。「大丈夫」の先生の一言が生きる力を引き出して行くのです。両先生の共通点はひとの命に対するやさしさです。そしてもう一つの共通点は若々しさです。全く年齢を感じさせない青年のような魅力と艶を感じます。いずれの先生も私の人生の目標にしたい先輩であります。
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