シンヤビオジマに学ぶ食物栄養学 < ミラクルエンザイムの温存に対する酵素リッチな食物の有効性を食物栄養学的に科学する@

・ミラクルエンザイムの温存に対する酵素リッチな食物の有効性を
 食物栄養学的に科学する@

(1) 酵素とは
 酵素はたんぱく質からなる生命を維持するための重要な成分です。そしてたんぱく質を構成するのは、わずか20種類のアミノ酸です。たんぱく質の大きさは酵素によって様々で数千のものから数100万ダルトン のものまであります。酵素はこのたんぱく質の部分をアポエンザイムと呼び、コエンザイム(助酵素)と結合することによって機能を発揮するホロエンザイムになります。通常の栄養学的学説を基にすると少なくとも私達が食生活の中でたんぱく質を欠乏しない程度に摂取していれば酵素が枯渇することはありません。すなわち血液検査で血清アルブミン値が正常であれば酵素の量が低下することは無いはずです。

 しかし、酵素の特長はそのたんぱく構造の中に活性部位を持っていることです。例えばたんぱく分解酵素の一種であるブタのペプシンと青カビが産生する酸性プロテアーゼはいずれも330個のアミノ酸残基によって構成されていますが、その活性中心はいずれも32番目と215番目のアスパラギン酸残基であり、その周辺の第一次構造であるアミノ酸の並びが酷似しています。このことは酵素の活性部位はその作用に共通の一定のペプチド構造を有していなければならないことになります。即ち特定のペプチド構造が常にたんぱく構造の中に組み込まれていなければ酵素にはならないということです。このことが酵素枯渇説のポイントになる可能性があると考えます。そして哺乳類のブタの分泌するペプシンと微生物が産生するプロテアーゼの活性部位が相似する事実はヒトが発酵食品や野菜を食べた時、それらの含有する酵素によって摂取する側の酵素が補完される可能性を探る糸口となるかもしれません。

(2)生命力とは  グリコリシスによるATP産生能が象徴的
 生命力につながる象徴的生化学反応がグリコリシスであると考えます。我々農芸化学を学んだものはグルコースからピルビン酸に至る解糖系(エムデン・マイヤーホッフの経路)とピルビン酸からCO2とH2Oに至るTCAサイクルは徹底的に記憶させられました。植物栄養学、応用微生物学、食物栄養学等、いずれの講座においてもエネルギー代謝においては不可欠の反応マップでした。これらを習得する中で生命現象の根本はエネルギー代謝であり、動物、植物、微生物の区別は無いことを学びました。即ち、C6H12O6がCO2とH2Oに分解される過程で生じるATPが生命力の象徴と考えてよいと思います。

 解糖系は筋肉を含む臓器細胞の細胞質中で嫌気反応が行われ、TCAサイクルは臓器細胞のミトコンドリア中で好気的条件下で反応が進み、大量のエネルギーを生成します。私達は食物としてブドウ糖の重合物を摂取します。通常の食事をしていればブドウ糖は不足しませんが解糖産物であるピルビン酸(C3H6O3)は解糖系の反応が順調に進まなければ不足することになります。ブドウ糖からピルビン酸に至る解糖系においては、ヘキソキナーゼ、グルコースホスフェートイソメラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ等10種類の酵素が関与しています。私は基本的にこの解糖系に働く酵素量または酵素活性低下が生命力の低下と言っていいのではないかと考えます。

(3)一般的理論に基づくたんぱく代謝のメカニズム
 たんぱく質の合成分析は主として肝臓で行われます。20種類のアミノ酸が原料となり、メッセンジャーRNAの指示に従って、肝細胞において多くの血漿たんぱく質、筋肉たんぱく質、酵素やホルモンのような機能性たんぱく質合成や分解が行われます。少なくとも肝機能が正常に働き、摂取するアミノ酸が不足しなければ、たんぱく質合成が滞ることはなく、酵素が涸渇することはありません。

 しかしながら新谷先生の臨床的経験から現実には酵素の涸渇と考えられる生命力の低下が見られています。その現象は何らかの形でたんぱく合成が阻害されている証拠です。それは肝機能が低下し、血清アルブミン濃度が低下することとは異なった現象で、少なくとも健康体でありながら腸の相が悪化し生命力が低下している現象ですので、たんぱく合成というよりは酵素合成が順調に進んでいない現象と言えると思います。もし生命力の制限となる酵素が一つでも活性低下を起こすと、次々と連鎖的に機能低下が進みます。特に酵素たんぱく質には活性中心があり、活性中心は特有のペプチドを形成しています。

 解糖系に関与する酵素の合成が滞ることによりピルビン酸量が低下し、それに続くTCAサイクルにおける熱量の発生が抑制されることにより、すべての生命現象が低下して行くことになります。通常の検診ではたんぱく合成に異常は認められない場合でも生命力を尺度としてみた場合、特に酵素のような機能性たんぱく質の合成、分解の低下が起こっていることは充分に考えられ、それが栄養状態の良否につながっていると考えられます。
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