シンヤビオジマに学ぶ食物栄養学 < ミラクルエンザイムの温存に対する酵素リッチな食物の有効性を食物栄養学的に科学するA

・ミラクルエンザイムの温存に対する酵素リッチな食物の有効性を
 食物栄養学的に科学するA

(4)アミノ酸プールの存在
 体内では食事から摂取したたんぱく質に由来するアミノ酸の他に体タンパク質の分解で生じたアミノ酸が存在します。個々のたんぱく質はその一部が固有の寿命ののちアミノ酸に分解され、それに見合う量のたんぱく質が新たにアミノ酸から合成されるということを繰り返しています。食事由来および体たんぱく質由来のアミノ酸は、互いに区別されることなく利用されますので血液および各組織に存在し、たんぱく質代謝に利用される遊離アミノ酸をアミノ酸プールと呼んでいます。

 体内で合成されるたんぱく質の総量(体重60kgの成人で180g/日)は食事によって摂取されるたんぱく質(成人男子の所用量で70g/日)よりも多く、成人では見かけ上、たんぱく質の量は変わらないと考えられますので新たに合成されるたんぱく質のかなりの部分が体たんぱく質の分解によって生じたアミノ酸を再利用して合成されていることが分かります。

 これによってアミノ酸の動的平衡状態がつくられ、たんぱく質の機能と恒常性が維持されています。即ち、酵素たんぱく質の一部は古くなって分解された体たんぱく質のアミノ酸から再合成されているのです。その中には酵素たんぱく質も存在しています。表に示すように加齢によってたんぱく質の合成量は低下します。当然酵素たんぱく質の合成量も低下します。合成と分解は平衡関係にありますから分解も低下し体たんぱく質からのアミノ酸の供給が低下します。その中には解糖系に関与する酵素たんぱく質の合成に必須なアミノ酸が存在するかもしれません。アミノ酸プールの中に酵素たんぱく合成に必要なアミノ酸を充分に存在させるためには食物として酵素たんぱく質をしっかりと摂取して補ってやるという考えに論理的な飛躍はないと思います。

(5)酵素摂取による酵素合成能の向上の可能性と推論
 摂取した酵素は決してそのまま酵素にはなりません。ヒトの酵素と他の生物の酵素は同一ではありません。必ずヒトの酵素は体内でアミノ酸を原料として合成されるものです。生体内の酵素を温存するためには効率よく酵素たんぱく質の合成が進むことと現存する酵素をできるだけ長持ちさせることです。

 酵素たんぱく質の特徴は一定の長さのペプチドが繰り返し重なる構造を有していることです。また、さらにそのユニットの処々に活性中心のアミノ酸が存在していることです。ペプシン様のプロテアーゼについて哺乳類と微生物が産生する酵素の活性部分のペプチド構造が酷似していることは前述しました。酵素を長持ちさせることはさておき、酵素の温存に摂取した酵素が有効に働く可能性があるとすれば酵素たんぱく質の構造にそのヒントがあると思われます。

 即ち同じ作用を有する酵素の構造、特に活性部位のアミノ酸残基のつながり(ペプチド構造)が類似していることと酵素には活性中心のアミノ酸残基が存在しているということです。そしてブタと青カビ酸性プロテアーゼの活性中心は32番目と215番目のアスパラギン酸残基です。このアスパラギン酸と同じプロテアーゼのたんぱく構造中のほかのアスパラギン酸との違いは充分に解明されていないと思います。いかに生体に備わった遺伝子情報が精密にできているとしても、全ての生体たんぱく質はどのようなアミノ酸が原料であっても効率よく合成されているとは思えません。やはり酵素を構成していたアミノ酸のほうが酵素の合成に適しているという考え方も不自然ではありません。

 アミノ酸プールに存在し、たんぱく合成の原料となるアミノ酸はもともと全て何らかのたんぱく質を構成していたアミノ酸です。即ちペプチド結合で他のアミノ酸とアミノ酸残基とを構成していた履歴を有しています。その履歴が何らかの情報としてアミノ酸に記録されている可能性が無いとは言えないと思います。例えば細胞レベルでは細胞表面に標識となるレクチンと糖鎖が存在していると同様にある種の酵素を構成していたアミノ酸分子は、元の酵素を構成していた標識を持っており、優先的に酵素たんぱく合成の鋳型の中に組み込まれているのではないかと考えます。

 また時には活性中心付近のペプチドは、そのままペプチドとして体内に存在し、酵素たんぱく合成を円滑に進める可能性もあります。このような推論から考えますと酵素たんぱくが活性を保ったまま温存されているような食物を多く摂取することによって、生体の酵素合成能が向上する可能性は充分にあると考えます。動・植物の組織を食物として考えた時、調理によって細胞やミトコンドリアは相当な部分が破壊されます。その際、当然、解糖系に関与する酵素群もダメージを受けます。酵素の供給源として食物や健康食品を考えた時、あまり強く熱を加えない方が良いと思います。また、たんぱく合成における食物成分の役割はアミノ酸の供給ばかりではなく触媒としてのミネラルやビタミンの供給源として重要です。そのため酵素リッチな食物は酵素の部分のみをあまり純化しないで適度にクルードなほうがかえって有効であると考えます。
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