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米は主食となる穀類として、アジアを中心に世界で約5億トン生産されています。米は炊飯米としての用途が圧倒的に多く、その大部分を占め | |
ていますが、清酒や焼酎、酢等の発酵食品や米菓・麺などの加工食品原料として、徐々にその消費量が増加しています。また近年、米に含有され | |
るフェルラ酸、γ-オリザノール、フィチン酸、イノシトール6リン酸(IP-6)等の機能性が注目され、米の新しい用途が開けつつありま | |
す。そして新たに米の機能性を高めた食品”発酵古代米”が、株式会社オリジン生化学研究所と国立大学法人弘前大学との共同研究で開発されまし | |
た。この機能性成分は「糖鎖アラビノキシラン」と命名され、研究が展開中です。 | |
古代米とは、縄文期や弥生期に栽培されていた「発掘出土米」ではありません。「古代はす」というはすの種類がありますが、これは古代の地 | |
層から発掘出土したはすの種が現代に蘇ったもので、学術用語として認知されています。しかし、米には正式な古代品種は存在しません。何故な | |
らイネの種子は、収穫後4年から5年で完全に発芽力を失ってしまいます。そのため、古代の施設や地層から発見されたもみが現代に蘇ることは | |
ありません。ここでいう古代米とは、我々の祖先が栽培していた「古代のイネ品種」が持っていた特色を色濃く残したイネのことです。なかでも | |
「赤米」や「紫黒米(しこくまい)」「香り米」という玄米に色や香りを持ち、そのため品種改良の対象にもならず、日本を含む世界中で細々と | |
栽培され続けていた米のことを主体に考えています。現在その古代米に注目が集まりつつあります。古代米の持つ色や香りの珍しさのみならず、 | |
日本人のルーツや古代の米や稲作へのロマン、そして健康食としての有用性が人々の意識を高めていると思われます。 | |
野生のイネは、ほとんどが玄米の表面に赤い色素を含む赤米です。そして古くからの稲作地帯には、必ず香り米があります。このように米が赤 | |
いとか香りがあるとかの特徴があるため、栽培種としての品種改良の対象とならず、昔ながらの性質を保持してきた品種群が古代米といえます。 | |
草丈が高くて倒れやすい・収量が低い・胚乳すなわち可食部の割合が低い・稲穂から米がはずれやすい・種子休眠性がある、などが特徴です。い | |
ずれもこれらの性質は、米に栽培にあたってはあまり歓迎されない特徴であります。 | |
◎赤米 | |
日本の在来種では「総社赤米」と「対馬赤米」が普及しています。しかし、これらの品種は草丈が高く倒伏しやすく、収量も低いという欠点 | |
があります。そこで改良種として、それらの欠点を改良した品種に「ベニロマン」と「つくし赤もち」があり、菓子や料理の材料として用いら | |
れていますが、これらの品種はいずれも濃紫色の芒(のげ)を持つので、稲穂が美しく、生け花やドライフラワーとしても利用されています。 | |
◎紫黒米(しこくまい) | |
主として中国雲南省から導入されたいくつかの半改良種が栽培されていますが、穂から米が落ちやすく、収量も低いという欠点があります。 | |
インドネシア・バリ島の紫黒米をもとに育成された「朝紫」は、玄米色も鮮やかで、加工米飯や加工食品に適しています。また「奥羽368号」 | |
は、大粒多収で酒や味噌などへの加工用として有望な品種です。 | |
◎香り米 | |
宮城県の在来種から改良された「はぎのかおり」、高知県の在来種に由来する「ヒエリ」、「ヒエリ」の改良種「さわかおり」、ラオス品種 | |
を親とする「キタカオリ」、インド品種を親とする「サリークイーン」等があり、普通のお米には混合して炊飯し、香りを楽しむことを主な用 | |
途としています。 | |
◎色素 | |
赤米にはタンニン素の色素が含まれています。ポリフェノールの一種で、血圧の低下作用が考えられます。紫黒米はアントシアニンであり、 | |
肝機能や視力の増強効果があるとされています。(表-1) | |
表-1 有色米の分類 | |
紫黒米(しこくまい)は通常の栽培種に比べ、貯蔵・保存性が高いことが観察されており、抗酸化性が強いことが示唆されています。(図1 | |
-1) | |
図-1 | |
◎ミネラル | |
紫黒米は、リン・カルシウムなどの機能性ミネラルの含有量が多く、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンパーオキ | |
シターゼ、カタラーゼなどの活性酸素除去酵素の助酵素(コエンザイム)となるマンガン・亜鉛・銅・セレニウム・鉄等のミネラル含有量も豊 | |
富です。 | |
◎紫黒米(しこくまい)は中国では「健康米」として利用 | |
紫黒米は、ビタミン・ミネラル・植物タンパク・植物脂肪を豊富に含有し、滋養強壮、腎臓機能を助け、胃を温め、血液を増やし、顔色を良 | |
くし、白髪を黒髪に育て、成長を促進し、健康的な体を作り、慢性の病弱者、病気回復後期の人、妊婦・産婦・幼児の健康増進作用ありと評価 | |
されています。(出典:戴 陸園 優奇稲種資源及其評価 「雲南稲作」99-105 1995) | |
発酵古代米は、国立大学法人弘前大学 教育学部食物学研究室と株式会社オリジン生化学研究所の共同開発により誕生した、抗老化機能性食品で | |
す。発酵古代米は、古代米の一種である紫黒米(しこくまい)を原料としています。品種は、農林水産省東北農業試験場において、インドネシア | |
バリ島在来の紫黒米と日本のうるち米を交配して冷涼な地域で栽培できるよう作り出された「朝紫」を用いています。 | |
古代米の特徴は、可食部すなわち精白部が少なく、いわゆる糠の部分の割合が高いことです。このような特徴は、炊飯米としては食味が悪く、 | |
マイナス因子となります。ですので、一般的には玄米のまま通常のお米に5%程度を混ぜて炊飯し、”健康ご飯”として利用されています。古代米 | |
の健康に利する成分、すなわち機能性成分はほとんどすべての糠の部分に存在していますので、玄米として食するのは正しい食べ方です。(図- | |
2) | |
図-2 | |
しかし、紫黒米を機能性食品素材として考えたとき、そのまま炊飯して摂取しても、その機能は十分に利用されない可能性があります。すなわち | |
ミネラル・植物性ステロール等は、セルロースやヘミセルロース、ポリフェノール等の難消化性成分で構成される表皮や果皮(ぬか部)の組織中 | |
に存在していますので、消化管内を素通りしてしまう可能性があるのです。また、難消化成分が多いことから、食味は決して良くありません。そ | |
こで古代米を発酵させる事により、繊維質の部分の構造が緩み、機能性成分が利用され易くなり、食味も改善されます。そして発酵産物として、 | |
γ-アミノ酪酸(GABA)やヘミセルロースオリゴ糖=糖鎖アラビノキシラン(オリザロース)が生成されています。 | |
1.アントシアン ポリフェノールの一種で青紫色の色素です。 | |
近年、植物性色素がファイトケミカルとして、その機能が注目されています。トマトのリコピンとともに注目度が高まっているのが、このア | |
ントシアンです。 | |
2.γ-アミノ酸 | |
古代米の発酵過程で生成されるアミノ酸の一種です。 | |
3.ヘミセルロースオリゴ糖=糖鎖アラビノキシラン(オリザロース) | |
オリザロースは、古代米の発酵過程で種皮の部分が酵素分解されることによって生成されたヘミセルロースオリゴ糖です。ガラクトース、ア | |
ラビノース、キシロース、マンノース等から構成されるヘテログリカンで複雑な構造を有しています。 | |
原料として用いている「朝紫」は、紫黒米(しこくまい)の一種です。紫黒米は、中国では健康米として利用され、健康的な体づくりに役立つ | |
食品に位置付けられていました。発酵古代米は、紫黒米の成分を無駄なく利用し、進化させた食品です。質の高いシルバーエイジを過ごすために | |
大変有用な食品として広く普及されることを確信しております。 | |